アンモニア関連銘柄
テーマ株「アンモニア関連銘柄」に注目が集まってきています。
CO2を排出する石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料に代わり、水やバイオマスから作られる水素エネルギーや、「太陽光」「地熱」「風力」といった自然界のエネルギーを使用する再生可能エネルギーが話題となってきていますが、カーボンニュートラル(CO2を増やさない)に向けた次世代エネルギーとして「アンモニア燃料」が注目されてきています。
2020年、菅首相は就任後初めてとなる国会での所信表明演説にて、2050年までに地球温暖化ガスの排出量をゼロにすると表明しました。
その目標達成に向け色々と研究開発が行われていくことかと思いますが、今回は関心が向けられてきている“アンモニアの用途”や、“アンモニア燃料のメリット”などについてご説明し、日本株で注目しておきたいアンモニア関連銘柄についてまとめてみたいと思います。
電力・エネルギー源として注目されるアンモニア燃料とは
皆様は「アンモニア」がそもそも何に使われているのかご存じでしょうか?
生産終了となってしまいましたが、「虫さされ」や「かゆみ」などに効果がある金冠堂の「キンカン」とかアンモニア水が成分に含まれていたりします。
透明無色で刺激臭のある気体で、分子式は「NH3」で窒素「N」と水素「H」で構成されています。
アンモニアは全世界で約2億トン生産されており、そのうち8割は肥料として消費され、樹脂、ゴム、接着剤などの化学製品原料としても利用されてきています。
あまり一般的には利用されることのない印象ですね。
しかしながら、脱炭素社会実現に向け、エネルギー分野にて“燃料”として注目されてきています。
アンモニアは燃やしても二酸化炭素を排出しないため、火力発電のカーボーンニュートラル燃料として期待されています。
以前ご紹介しました“脱炭素電力”、「再生可能エネルギー・クリーンエネルギー(米バイデン)関連」の一角でもあります。
火力発電所で使用される石油等の化石燃料は発電時に大量の炭素を排出しますが、アンモニアは分子式「NH3」なので炭素=カーボン「C」を含みません。
従って燃料にアンモニアを混合させ窒素「N2」、水「H2O」に還元させることで「CO2」の排出量を抑えることが可能です。(他の燃料と混ぜて使うので混焼と言います。)
その第一歩としてまずは石炭火力への20%混焼を行い、将来的にはアンモニアだけを燃料源とした「CO2」を完全に排出しない開発が進められていくそうです。(混焼に対して専焼と言います。)
また、同じく次世代エネルギーとして注目されている水素の「キャリア」、つまり運び屋、輸送手段としての用途があります。
水素は燃焼時に水「H2O」しか排出せず、資源枯渇の心配がない、という点で大きなメリットがありますが、密度が低いため、例えばガソリンに比べ3000倍の量を必要とします。
つまり輸送、貯蔵に大きな課題があります。
そこで、水素より密度が高く取り扱いやすいアンモニアに変換して使用する際に水素を取り出し使用する方法が考えられました。
アンモニアは既に肥料や化学製品の原料等で生産、流通が確立されており、初期コストが少ないという事も忘れてはならないメリットです。
つまり、他の次世代エネルギーに比べても早期の実用化が見込まれているわけです。
菅首相が就任後の所信表明演説にて2050年までに二酸化炭素等の地球温暖化ガスの排出量をゼロにすると表明しましたが、民間企業も動き出し、東京電力(9501)と中部電力(9502)の合同会社JERAは、2020年10月に「JERAゼロエミッション2050」と銘打ち、“2030年には非効率な発電所を完全廃止してアンモニア混焼の本格運用を開始、2040年ころには専焼化を始める”というロードマップを打ち出しました。
これらが実現すると2050年には1.7兆円もの巨大マーケットに成長する計算となるようです。
日本政府が掲げるアンモニア燃料の使用目標
日本はエネルギー供給のうち8割以上を石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料に頼っています。
特に石油への依存度が40%前後と世界的にも石油依存度が高い特徴があります。
【一次エネルギー国内供給構成及び受給率の推移】出典:IEA「World Energy Balances 2017 Edition」及び資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」
また、少資源国の日本は90%以上を海外からの供給に依存しています。
これは主要国の中でも特に低いエネルギー自給率を示しており、「国際情勢に左右されがち」な特性と言えるでしょう。
出典:IEA 「Energy Balance of OECD Countries 2017」
更に、化石燃料は「温室効果ガスを発生する」、「市場価格が安定しない」、「資源枯渇リスク」等の問題があり、こうした問題解決に化石燃料に変わる太陽光などの再生可能エネルギーや、非化石エネルギーの利用促進を目標として2009年7月にエネルギー供給構造高度化法が成立されました。
内容としては「我が国で使用されるエネルギーの大半を供給する、電気やガス、石油事業者といったエネルギー供給事業者に対して、非化石エネルギーの利用と、化石エネルギー原料の有効利用を促進するための措置を講じます」とのことです。
家庭などで生じた太陽光発電設備での余剰電力の買い取りなどが始まりニュースを賑わせました。
火力燃料として用いられることが注目されてきているアンモニアですが、2021年2月8日、経済産業省はアンモニア燃料の使用量を、2030年に年間300万トン、2050年に3000万トンとする目標を設定しました。
脱炭素社会、カーボンニュートラルの実現を目指す流れがより本格的に起き始めたことで、成長性を期待できそうな「アンモニア関連銘柄」は国策絡みの銘柄として注目されてきている感じですかね。
製造や関連サービスを行うアンモニア関連銘柄・関連会社
それでは「アンモニア関連銘柄」としてアンモニア製造やアンモニアを使ったサービスを展開している銘柄をご紹介したいと思います。
アンモニア関連銘柄 木村化工機(6378)
※時価総額:133億円、PER17.8倍、PBR1.06倍(2021年2月26日時点)
2017年に、木村化工機(6378)、澤藤電機(6901)、岐阜大学の3者は、共同で低濃度アンモニア水から高純度水素を製造する事に成功しました。
更に2019年には製造した水素から燃料電池発電を行う事に成功しました。
アンモニア排水から発電するというアイデアは既にありましたが、実際に成功したのは世界初のことです。
この実験を通して将来は消費電力ゼロ、CO2排出量ゼロのアンモニア処理システムを目指すそうです。
株価はこれらの報道を受け急騰しました。
その後元値付近で落ち着いた後に2020年11月ころから再浮上を見せてきています。
期待感が先行し物色されてきている印象ですが、アンモニア関連銘柄の本命株として今後の株価推移にも注目したい銘柄ではないでしょうか。
アンモニア関連銘柄 澤藤電機(6901)
※時価総額:104億円、PER1,039倍、PBR1.34倍(2021年2月26日時点)
澤藤電機(6901)は上述のとおり木村化工機らとアンモニアから高濃度水素を取り出すことに成功した時に株価5倍と大きく急騰しました。
業績面は新型コロナウイルスの影響で他部門のトラック電装品の売り上げが大きく下がり赤字転落となりましたが、来期は黒字復帰の予想を出しています。
株価はチャートを見ると、度々急騰を見せてきている印象ですが、2021年2月22日あたりから出来高が大幅に増えているので、今後の取引にも注目しておきたい銘柄ではないでしょうか。
アンモニア関連銘柄 中外炉工業(1964)
※時価総額:157億円、PER-倍、PBR0.77倍(2021年2月26日時点)
中外炉工業(1964)は工業炉(鉄やアルミを加工する設備)のトップ企業で、アンモニア燃料の熱処理炉の開発を行っています。
アンモニアは単体で着火しにくく燃焼速度も遅いため化石燃料との混焼が進められていますが、2020年8月にアンモニアのみを燃料とする専焼する技術を開発したと報道されています。
もし全ての大手電力会社の石炭火力をアンモニア専焼にすると排出量の半分にあたる約2億トンのCO2の削減が見込まれ、大きな期待が窺えます。
※1:国内の大手電力会社が保有する全石炭火力発電で、混焼/専焼を実施したケースで試算。
※2:日本の二酸化炭素排出量は年間約12億トン、うち電力部門は年間約4億トン。
チャートを見ると2021年2月24日あたりから出来高を伴い株価を上げてきていますね。
2021年2月12日に発表となった「2021年3月期 第3四半期決算短信(連結)」は経常損益が5.49億円の赤字に転落となってますが、アンモニア関連銘柄の中でも面白そうな材料がある銘柄だと思うので、今後の株価推移にも注目したい銘柄ではないでしょうか。
アンモニア関連銘柄 宇部興産(4208)
※時価総額:2,271億円、PER16.6倍、PBR0.64倍(2021年2月26日時点)
宇部興産(4208)は2020年10月に液体アンモニアを製造している宇部アンモニア工業有限会社を吸収しました。
アンモニア事業の強化と業務効率化の観点から一体運営を強化するための吸収合併で、今後の動きが注目されます。
チャートを見ると2021年1月5日安値あたりから株価を上げ強い値動きをしてきている印象ですね。
アンモニア燃料に関連した報道は2021年も色々と出てくるのではないかと思うので、関連銘柄の1つとして今後の株価推移にも注目しておきたいところではないでしょうか。
アンモニア関連銘柄の本命株・出遅れ株を上手く狙いたい人は
アンモニアは「脱炭素」というキーワードで大きな可能性をもっていると思います。
日本は化石燃料では一方的に外国に頼る図式ですが、アンモニア発電を世界で初めて成功した事もあり、世界でも進んだ技術を持っています。
もしかしたら「燃料」というカテゴリーで日本が世界を引っ張る存在になるかもと、アンモニアはそんな期待をさせてくれるテーマではないでしょうか。
2019年こそ国内100万トンの生産量しかありませんが、だからこそ今後生産増を掲げている今が様々な思惑が浮かび要注目のテーマと言えると思われます。
株式投資は成長性・将来性のある事業を行っている銘柄を選ぶことが大切かと思いますので、テーマ性に沿った本命株・出遅れ株にはしっかりと注目していきたいところではないでしょうか。
しかしながら、問題は“どの銘柄をどのタイミングで売買するか”かと思います。
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